AIDで生まれた子どもたちの声

Voices of Children Born with AID

AIDで生まれた子供たちの声

「医療としてのAIDに対する疑問と違和感」

AIDで生まれた人にも様々な考え方、感じ方の人がいると思います。私はAIDという生殖技術はどうなのだろうと感じます。そもそも精子はあげたりもらったりしてもいいものか、という疑問があります。そして、医療の手が入ることで夫以外の精子提供を受けることは医療だと言われることが、個人的には釈然としない気がするのです。

「一人では気付けなかった自分の気持ち」

母から告知を受けて25年になります。自分が父と血がつながっていないと言われて、大きなショックを受けてもそのこととどう向き合えばいいのか、第3者の精子提供を受けて生まれたと聞かせれてもそのことをどう考えていけばいいのか、自分の気持ちがどこにあって、どう感じているのかよくわからないまま、ずいぶん長い時間を過ごしてきました。

 

今思えば、自分の気持ちに向き合えないでいるというのは何か不安で、自信がなくて、落ち着かなくていつもイライラして、決して幸せな時間ではありませんでした。そういうもやもやした気持ちに気付いたのは、同じAIDで生まれた人たちの存在を知ったからでした。

 

たった一人では、自分の気持ちにも気づけない。その気持ちをきちんと表現し、自分で認めてあげることができてはじめて、誰でもない自分として生きられるのだと思います。人とつながれることで、自分を知ることができる。もし、AIDで生まれた当事者の方がおられたら、つながりたいと思っています。

AIDで生まれた子どもたちの声02

「話を聞いてもらうことが心の支えに」

自分の生まれが人と違うことを誰にでも話せるわけではありません。できることなら、知らなかったことにしたい、忘れたい・・そうしないと、生活できないような時期もありました。でも、自分の核になること、一番根っこの部分の揺らぎを押し殺したままでは立ち行きません。もやもやした気持ちが続き、常にイライラし、体調が悪くなりました。

 

たとえば、テレビで親子のドラマを見ると突然涙があふれて止まらなくなるなど、ほんのささいなことで我を忘れるくらい動揺してしまう自分がいました。 いろんな人に自分の気持ちを話してみました。「親は大きな愛情をもっていたんだね」と言われたときは傷つきました。

 

でも、同じ立場の人たちや、心理の専門家の人、生きづらさを抱えたマイノリティーの立場の人に話してみたら、まっすぐ受け止めてもらえました。気持ちが少し軽くなりました。それ以来、安心できる場所で、安心できる人にその時その時の自分の気持ちを話して聞いてもらうことが支えとなっています。

「親に言えない複雑な思い」

自分がAIDで生まれたことを知って、大きなショックを受けて悩んだり苦しんだりしたことを、今でも親には言えません。親もいろいろな思いをしてきただろうし、私に知られたらかわいそうだと思って隠してきたのだからと、親を気づかってしまいます。

 

私は事実を知ったことでとても苦しかったけれど、知らないよりはずっとよかったのです。でも、どれほど苦しいのかほんとうは親にわかってほしいのです。一番わかってほしい人に何も伝えられないのです。

 

伝えたところで生まれ直すことなどできません。親に後悔されるのもつらいのです。また、嘘をつかれていたことで親を信じられなくなったということもあり、私のほんとうの気持ちは伝えたくないという矛盾した思いもあります。

 

とても複雑な心境です。

「子どもにとってのAIDとは」

AIDは生まれる子どもにとってどうだろうかと考えてみてほしい。子どもに出自を秘密にすれば問題ないとされ、60年も続けられてきた。今も生まれ続けている。ほんとうに問題がないと思ってきたのだろうか。子どもにうそをつき続けて平気でいられる親が、ほんとうにどれだけいるのだろうか。

 

子どもの立場からすれば、自分がおかしくなるくらいの強い怒りでいっぱいになる時もある。生まれる子どもにとってよいやり方だとは、どうしても思えない。

 

問題があると思う人は、どういう立場であっても、勇気を持って声をあげてほしい。